2014年2月14日金曜日

母と娘

母は
あの頃
何を思いながら
私の髪を撫でたのだろう

父は働き
家では何もしなかった
呑気に笑う父をしり目に
母は唇をかみしめ
妹を抱いた

夫は働き
家では何もしない
呑気に笑う夫をしり目に
家事をこなして
背を丸める

この道
子を産んでも
この道
いつまでも

夫の寝息
妻のため息

2014年2月7日金曜日

時が過ぎても

やさしい目をした
青い髪のおにいさん
わたしの頬の冷たさを
さわることもないくせに
肌質すら分かったような顔をした

雪が降るその日に
私はステージへとおりたった
周りはざわめきも喧騒も
とりたてずに
ただひたすらに動いていた

私のてのひらに
しみた一粒の涙は
憧れの線に乗って汽車を
どこまでも走らせる

ワルツ
ワルツ
あのひとがくれた音の質を
ワルツ
ワルツ
今、どこを歩けばいいのか

ワルツ
ワルツ
曇り空の向こうにむかって
唱える
ワルツ
ワルツ
すべての罠が嘘であっても
すべての罪に殺される

ワルツ
ワルツ

2014年2月5日水曜日

帰省

あの頃の街が
忘れられないと思うのは
この街に
私ひとりだけか

旧友に会ったとして
また一からやり直すのも
面倒だと
街をふらふら
ひとり歩き

駅の出口に
大きな木があって
今頃は実がなっている
この街を捨てられない
あの木は何を見てきたか

木陰によりそい
夕暮れをまつ
私は誰に会いたかったのだろう

街も知らぬ間に
歳をとっていた

また孤独になってしまった

ひとり、帰る。

今 おりたった
ふるいまちに
今では迎えに来る人もいない

静かな町よ
あの頃は
右も左もやかましく
建物にさえ
押しつぶされそうに窮屈だった

この街のにおい
これは私にもある「ふるさと」
抱きしめていい
私のにおい

いつもクールな顔をして
やり過ごしてきたけれど
ひとりぼっち
駅のホームに佇めば
また心は
誰かを呼んでいる

人を求めやまない
ありきたりな
人の心の淋しさよ

秋風の吹く
この駅の駅長は
むかしとは違って
今は何やら都会顔

たどりついた街

バカらしいと
見知らぬ街の山裾が
雨の中
頂を天に向けまっすぐのばし
こっちを見て嗤ってる

「知りたかったんだ」
「見つけたかったんだ」

雲は流れ
時は行き過ぎ
身のおきどころも分からぬまま
己の人生
投げうったとて
川から海へと運んで行ってくれる
わけじゃあるまいし

一つを信じて突き進んだ
その結末がこんなにも
心を
隅っこに追いやるとは

街中に煙がたちのぼる

私の生まれた街は
色鮮やかな花々や
季節のうつろい
賑わいがあったっけ