2016年6月25日土曜日

転機

新しい世界が見える夏
過ぎた時の中で
後ろめたい「ほんとう」は風に流れた

何ものでもない私が歌ううた
まだまだ今からがスタート




静寂と空白のさみしさ
二人の間の
涼しさが寒気に感じられる夜明け前

空、からしか生まれないし
空、でいいのだ ここから言葉を吐けば

黒髪

アメリカで売り出す日本人の髪の色は真っ黒
巷で
夫が外国人で
奥さんが髪を染めているのを見たことがない
よもや
黒髪ロング率は半数を超えている
日本人は外国人の目線を気にしすぎだ

今の若者が黒髪なのも
アイドル、メディア戦略でしょ?
昔は茶髪にルーズソックス、ギャル文化で
その真面目さとは違う黒髪でしょ

2016年6月24日金曜日

白い箱

目的はなんですか
母の気持ちを
少しでも痛めつけることが目的ですか

皆は意識もせず
母はその母に、その母はそのまた母から
愛と憎しみを携えられ
子にそのまま受け渡される

自然とは両局面をもち
命の誕生に笑いも怒りもしている
愛しても恨んでもいる
内臓損傷され
輝く子は我がものではないという
理不尽さがいやなの?

明らかにしなくて良い詩は
虚構と美しさがあればよく
ある種の同情票が
ある種のこれしかできないんだろうな
よくやった、みたいな
自尊心を満たすための偽善が
賞を与えるのだろうか

苦しみを苦しみと言える自由
静かな世界をきく

そこには精神だけがあり
侮辱される仲間や医療や世間や制度
傷ついた重たい
肉体や心がない詩は…


かたや出産に悶え苦しむ作家の話
生はそんなに
難しくて醜いことなんだろうか

生の根源の悲しみに
もっていかないで、悲しくなるだけだろう
辛くなるだけだろう

だまされないで
何かを根拠にわかる、だけの人たちに
あなたのそんげんを与えないで

叔母と
「生き」るため葬った白い箱
痛い、痛い
返り討ちにあう ガラスの破片

食事前のトイレ

ああもうこれで逃げられない
父のいる戦場
食卓へとつかなければならない

尿意というのは
いつまでも
どこで終えるかなんて
普段は意識もしないからわからないけど
できるならこのトイレから出たくないけれど
数分のうち
できれば一二分で出なければならないわたしは
無理やりこれで終わり、にするため

なるべく緊張をとき(緊張していて食卓に戻ったのち尿意を感じることは
食事中に席を立つことは許されないために絶対にできないこと)

おしりをかいてみたり(おしり側に触ると尿が出そうになるところがある)

最後、って人体に最後なんてないのはわかっているけれどなるべく最後まで出るまで
最後のけじめとして
お腹を3回叩いて尿を出す

3回になったのは
昔どこかで日本人は3が好きとか3が落ち着くとか聞いたし
そうこうしているうちに時間が経ち
ああ待たせては悪い
家の食卓では母がまっている
家族皆の食事が時間通り始まり終われと待ち構えている
しかしこれが私の編み出したトイレの一番短いバージョンなのだ

昔は祖母に教えてもらった除霊の仕方
それは呪文だとか長いので
だんだんげっぷが出てきたり体に異常をきたすので
最後の左、右、左の順で肩に息を吹きかけるおはらいだけをやっている

あとはふた粒、み粒のむ
カロリーを抑える錠剤
それは健康食品なのだけれどばれないようにいつもポケットにいれて
(だから服には必ずポケットがいる)
ポケットの中に小さな口つきのビニルを入れて
その中に錠剤を入れてポケットが膨らまないように注意して
その準備を食事前にうっかり忘れたことなんて一度もなかった

外食の際はトイレで
トイレの水は手洗いの水さえ汚いのに
その汚さよりカロリーを摂るのが怖くて
その水を手ですくってのんだ
まさか飲食代を払ってくれる
親の前でお店の水で飲むわけにもいかずだから外食時は
食べる前に錠剤を飲むのが苦痛だった

パン屋騒動

迎えにゆくよ、優しい声がした
だから駆け出したのに
次の瞬間、近隣のビルの工事音が雨の中
鳴り響いた
怖くなって近くのパン屋に入った

お気に入りのメロンパン
やはりパン屋のパンはちがう、と
本当は食パンが食べたかったけど
外で食パンを食べてる女は
戦時中でもあるまいしどうかと思われるからやめて
ならせめて
家に持ち帰る、ということができればいいのに
匂いがする
生きてる、食べ物を部屋に置けないわたしは
それは誘惑の量なのだけれど
早く食べなきゃ、
劣化がわかりやすいものはこちらが
気を遣い過ぎて落ち着かないから

添加物もりもりのパンは
美味しさにも健康さにも欠けるけど
密封されていてわたしを急かさない点で
いちいち香り高いパン屋で
迷ったり選んだりして買う必要がない点もよく
無機質なコンビニのパンしか
部屋には持ち込めないのであるが

お気に入りのパン
たとえば今日の体調はこういうパンを
味を、今日は新作を、とかいう風に臨機応変には
変えられない
変えるのが怖いためにもう好きなものはこれ、って
ほぼ信条みたいになっている好き、な
お気に入りのパンを買うため
列に並ぶと
皆割とトレイから溢れるほどいろんなパンを買っていて
きっと家族で分けるのだろうけと
誘惑されるがまま
あれだけの量を買えたらどんなに気持ちよかろう
主婦の特権だなとか思いつつ
列に並ぶ辛さをごまかす

自分タイミングで食べられない
もどかしさを感じながらも社会のきまりで
大人しく並んでレジに向かう

お金を取り出す
そのとき
いく人かの手に渡り汚れた小銭を
潔癖症のわたしは取り出さなくてはならない

財布のマジックで
財布にはその毒を封じ込める力があるのだと
いつからか信じていて
根拠もないけど信じないと生きていけないので
そうしているだけなのだがその本当はただの黒い財布から
小銭を取り出し

今日のお姉さんは
無愛想でもいい、攻撃的でなければ
話しかけられなければとおもい
お釣りのやりとりすらこわいから
なるべく時間や厄介が増えないように
後ろも並んでいるし
金額にぴったりの小銭を差し出す

端っこの席を探す
端、端
トイレが隣でもいいから端、端っこ
むしろ儀式的に食べる前はトイレと手洗いを
どんなに困難でも課しているため望むところだと
思いながら席に座る

荷物は多い
人に言われたよ、どこ行くのって
よく言われるよ、旅行でも行くのって
だから席は2ついる
都会にいてもそれは死守させてもらっている
ごめんなさい
どうしても無理なときは気があれて店から飛び出す

さて、やっと
メロンパン
女らしく。
女らしさの記号だから安心する。
やわらかいし
誰がどう見たって男性的、な食べ物ではないし

さっき店員がいれたビニルから取り出し
サクサクさの皮がビニルとの接触で
ビタっとしていないか確かめながら頬張る
その瞬間
自分から
乙女成分が満タンになって放出される
心躍り
そのレベルはシェイクシェイクくらい心躍りながらも
無表情で食し終わる

どうしてお腹いっぱいになっちゃうんだろう
あの感激をもう一度手にしたいと
二つ目のパンを頬張っても
もうあの一つ目のパンの味はしないとわかっている

あれは12時間の飢餓と排便後のスッキリと
幾多の試練を超えて、の一口目だ
仕事も人と会う予定もない
昼の一口目、のごはんだから
久しぶりのあのパンだからおいしかった

慣れた舌
見えないけれど幾分か埋まったお腹
後何百円足して
また人ごみに並んで
買う手間、同じ形状ではないし
さっきより幾分か冷めたパンを
また一度目の感激を味わいたくて欲するなんて
わかっていながらアホらしいし

時は
タイミングは
全てがあわさるタイミングはもう
つくりだせない
明日、にしか
最速でも明日、にしか
それを今すぐ味わいたいなんて安直で

妥協しながら少しおちた美味しさをまた手間をかけて手にするか
そのときにはまたこの店の混雑振りもどうなっているかわからないし
そもそもカバンに貴重品をいれながら席を立つのもどうかと思うし
そんなスリルを
そこまでわかっていながら
金と時間の無駄をかけるのか、ああでもまだお腹が
何かが満たされないと
この場を離れるかで迷ってしまう

外は土砂降り

ベル

時間が来たら
鍋の中身は沸騰する
目覚まし時計が鳴る
お風呂の湯が満杯になる
洗濯機が回り終える

わかってる
むしろこっちが意図してはじめて
機械とか現象は
当たり前の法則で起きてくれているのに
そのタイミングに合わせることすら疲れるんだ

待って

今日はどんよりとした曇り
夜明け前
ベットの脇から汗みたいな飾りみたいな
水のかたまり、ガラスみたいにキラキラした
雫がしたたりおちていて
ってそんな気がして
起き上がっていつもの紅茶をつくるんだけど
それどころじゃなくって

走る衝動をなくしてしまった
オトナになった自分
それは言い訳だよって呟いた

お気に入りの本を読み終えてしまった
こんなにたくさんの本が
ありあまるほど溢れかえっているのに
その中で選んで
お気に入り、なんて見つけて
またそんな偶然に出会うことの希望が少なすぎて
虚しくなるよ


2016年6月23日木曜日

みどり

緑色の壁なんです
それでもそこからミミズが顔をのぞかせるような
昔懐かしい
愛着あるビルなんですお願いです
これもまた廃墟にしないで
雨の夜にまで工事で壊したりしないでください

私ののどは未だあなたの名前を呼べません
潤わないのど
渇きを潤す水がこの街のどこにも見つけられません
辛いフードを選んで
わざわざ乾かしてたらふく含むミネラルウォーターくらいでしょうか

あなたを呼びたい
あなたをさわりたい
どこにいけばこの世界は開けてくれますか
ずっとずっと暗闇をてさぐり

2016年6月13日月曜日

夕食

日が沈むころ
私の腹が栄養脂肪で満たされていく
もう眠るだけだというのに
そうカロリーを消費できない夜に食べる、
人間の習慣である夕食
絶対
、絶対
風呂トイレベッドだけではひもじくて
夜は私を解放しないのに
重たく内臓に敷き詰められる夕食
色とりどりに
肉や魚や
百姓の魂がねじ込まれているような
重い、重い米粒を
いれる
いれなくてはいけない
痩せたいのに蓄えなければならない
日本人は
この習慣を持ちながらダイエット広告を
そこら中のメディアを使って流布し続けている
お偉いさんの課税じゃあるまいし
無視すればいいけど
選挙よりもたくましく人々を洗脳し続けるからわたしは
こんな国が大嫌い

マドレーヌの誘惑

マドレーヌの銀紙はしっかりしていて
それ自体は苦くて
けれどその銀紙に固定されたふわふわ
それは黄色くて甘い夢の象徴
ふわふわ
ずっと子供のままでいられるような
囲われて安全な朝から夜までを送れそうな夢に似た甘さを
しっかり、それはしっかりと支えてくれる
金属アレルギーであり、歯が丈夫でない私にとって苦痛の銀紙

注意深くそれを避けて
ほおばるたび
お母さんに抱かれているような
幼いままの心が満たされるような
そんな幻想に唾液が応えるように分泌される
デコレーションには母様の好きなナッツと
歯ざわりが心地よいザラメが塗布してある
あの丘に
よじのぼり、しがみつき、また味わいたいマドレーヌ

2016年6月9日木曜日

一滴

私は本当に一人になってしまった
あの人の名をうねるほど 心で呼び続けた

しばらく空っぽの心を抱いた
わたしは確実に何かを失った
それを感じることを恐れ
人に紛れ、空気に合わせ、街に溶け込んできた

何かの思想にしがみつき
誰かの言葉を自分に染み込ませようとした

障子の隙間から
竜巻のような風が吹き込み
私の子をさらってしまった
夜風に揺れる植物は それでも太陽目指し進んでいる
わたしは
それをぷつりと途切らせてしまったのだ

床から静寂という冷えが
体に這い上がってまとわりついてくる
孤独を吐き出すごとに わたしは心を取り戻していった
深い眠りについた

葛藤

いのちは
私を、汚しました
私の中を暴れまわり 
機械音 都会のビル風 季節ない街

いのちは
あたらしいいのちは
私を殺します
私を殺そうとしています

のっとる体
のっとられる体
私の中を侵略争いの日々

私は唾液を吐きました
胎児は吐けません
私は古い土地を訪ねました
郷土料理 故郷の人の顔 錆びた看板
思い出が苦しく胸に詰まりました

吐き出したい気持ちは
ただただ生命だけでした

戦いは続きます
侵略される側である
私の意図も意思も天にあり
今ここの何処にもありません

喉が渇き
違うものの空腹がします
違うものの眠気がします
死にたいです

生き死にが混ざる体内
わたしは吐くものを
吐かないもので押し込め
強い混乱に力なくします

検診がある
同じ病院で

あした、あなたに会いに行く
失恋に似て
あきらめが悪いわたしは
病院に行けば赤ちゃんに会えるような気がして
浮き足立つ
殺しておいて

あの人形だってそうじゃない
親戚の子だってそうじゃない
あの子とは違う

公園で親に見守られ騒いでいる子供たち
私はこの五月の若葉のゆらめきを
見せてあげられなかった

中絶手術

鮮明に覚えている、あの暗闇と
メタルのオペ室での出来事
私が未来を歩くことさえ遮るような強い力で
私の肉体はえぐられた

堅くて痛い台の上で
半裸にされた私の肉体は
実験台のように幾人にも眺められ
羞恥の限界を超えた行為によって乱された

金属が私の柔らかい肉体を
生きている子宮をひらき
暖かい壁を破る
かきだされる命は
そこで機械音とともに終わらされる

捨て去られたのだろうか
私の赤ちゃん
泣いてはいないだろうか
この世のどこかで
ごめんね、ごめんね

私の肌についた傷より
私のいのちを傷つけられた傷が
胸の中に黒く拡がっている
それがいかにも誰かの所為ならばやり過ごせよう

嗚呼
嗚呼
この日の曇天の空は忘れまい
星が降ろうが
私の心臓を打つ矢にしか見えない

2016年6月6日月曜日

化粧

家に帰り
夕飯の支度中
整えられた髪が
ほおを撫ぜると
疎ましく感じる

私たちはなぜいつも
外、それは他人のため
否、自分のためだろうか
他人からもらうレッテル
少しでも好印象で高値のレッテルを貼られるために
己を刻み続けるのだろう

時間だけじゃない
ファンデーションを塗られ傷む肌
ヘアアイロンに伸ばされ熱に負ける髪
塗っては剥がし
また塗るサイクルの中で消費する化粧品の数と
生計の中で必須になる美容のための金
どれだけ他者に貢げば気がすむのだろう
本当に自分のためになっているだろうか
不安と向上心を煽るメディア
常識、が 皆、が
この無駄な活動

この世で一番の別れ

華々しい花火
子宮の壁を破る
私の片目をもぎ取るほど
心は消耗した
痛みとは
必ずしも
痛いだけではないと知った


剥がされた
潤いは
眼球の潤いは
愛に違いなかった

愛に巻かれた様は
蜜をまとう白玉団子のようで
眼球は
あくまでも肉体の一部である眼球は
鍋に落とされ
固まる菓子とは違い

体の中を引っ張り
しがみつき
離されようとした瞬間にそれを拒み
ごめんなさい
子よ、ごめんなさい


私の未来まで見ていた眼球は
悲しみに染まる間もなく
真っ暗な闇に葬られました
何かを感じ、る前に
世を奪われました

私が奪いました

世の中で、大人たちが
出した答に基づき執行されました
整えた
日程、金銭、人材たちよ
赤子は強く存在するばかりで
余儀なく殺されました
この世を見ぬまま
ただ視界を奪われました

私たちが
大人が
責任者たる我々が奪いました
大切な「いのち」を

喪失

私はどうして
今、ここにいるんだろう
彼はなぜ
私のそばにいて、泣くのだろう

私は今 風になり
大空を抱いて走りたい
空の全部を駆け回りたい
この胸に抱けなかった赤子を求め
風になりたい

どこを吹くの
異国の砂漠、大河、宇宙の銀河の
遠くの遠くの清い風
ただ走って、走って、あの光まで
たどり着きたい

2016年6月5日日曜日

一生

こんなに切実に
詩を欲するなんて
思ってもいなかった
発表していたあの頃より
今は切実に
自分が詩を欲している
求めている
書くことが生きること
それでいいと思っている
唯一の自分を認め始めている