2013年4月30日火曜日

黒い鐘

やわらかく、殺されたことがあった。

夏が西日で遮られるとき
貴方の影が霞んだようで
忘れた心が
海の轟のように荒れ狂う
あの夢の端っこを
結んだ人の眼は
狂気と憂いに満ちて
暮れゆくあの日の階段から
転がり落ちたあとの静けさ
何でもなさ
死ねなさを想う

蛙が鳴いた
ひっくり返って泣いた
馬鹿に大きな目玉を見開き
彼としか訪れた事のない喫茶店に
母と妹を呼んだ

代わる代わる満ちてくる夕陽に
私は答える術もなくして
亡骸になった鳩に
萎びた羽に
何と呼び掛ければよかったのか
生きられないという
目をするほど
私は何処に
己の誇りを持って行ったのか

こんな風にしか存在できない中で
泣く事もできない
誰かのルールと
誰かの在り方に
私の何かがこびりつき
捨て去る勇気なく
大きな口を開けた瓶に
すがりついた
凝固物みたいに薫る

2013年4月15日月曜日

うねりまく

わたしは
もし自由にできるなら
あの人のそばを飛びたい
一時のかなしみに
すべてを壊してしまいたいのに
今日も私は生きていますし
私は今日も過ちを犯す
あの人を
信じられなくなるたびに
この靴ひもは
窮屈になります

ちぎれるような
刃音を聴いた
私は黙って空を見上げた
どの地上にも
この雨は降っていると
知っているのに
待つ
傘もなく