川が流れ
古の港に着き
川は
赤らむことを覚え
濁流の中で
鯉が一匹、体をくねらせながら
鱗の銀色を鈍く光らせながら
上を目指し
うなっている
闘っている、強く
涙や悲しみといった
憐れみを感じさせず
弱さを隠しているという
痛々しい感じでもなく
ただ
強く、強く
身をよじらせて
上へと向かっている
その力強さと
たくましさと威厳に
周囲の水の粒すら引き連れ
泡粒まで巻きこんで
川の流れすら
変えんとする勢いで
上を目指している
他のものたちは
後ろに付き添って
甘い汁を吸いたがる
てっぺんの景色を
労力なく見たがる
見たがる、という観客であり
荷物を
なんともせず
むしろ力にすら変えて
よじ登っていく鯉
空気は次第に
夜へと運ばれていくのに
あの川には
赤々とした命が
我、とばかりに主張している
何か新しく
何か熱い事が起こっていると
町の人々が気付くまでに
そう、時間もかかるまい
我々が
憎しみから得るものは
少なく
弱さを抱えつつも
明日を信じ、勇敢に戦うことで
何かを
何かをきっと
変えてゆけるのだ
鯉の鱗がはがれおち
やがて美しい天女のような
白魚になった時
滝のてっぺん
あの鯉は、勝利を勝ち取っているのだろう
美しい光の中
輝くだけの
天女のようになるのだろう
2013年12月7日土曜日
失敗
蜜つぼが
割れる
悪魔の時間に
私の
考えていたことが
雨雲のうねりとなり
心にはよろこびとなり
よろこびとなり
半月に
白っぽい半月に
垂れさがる憂鬱の恩は
とめどなく
地面からあふれ出る
温泉のようにたえまなく
あたりにひろがり
私から出た血は
今日階段ですれ違った
過去の誰かと
同じ顔をした沁みとなり
パンツに色づく
私は
それをひとさしゆびで
そっと掬い
舐めたくなるのだ
割れる
悪魔の時間に
私の
考えていたことが
雨雲のうねりとなり
心にはよろこびとなり
よろこびとなり
半月に
白っぽい半月に
垂れさがる憂鬱の恩は
とめどなく
地面からあふれ出る
温泉のようにたえまなく
あたりにひろがり
私から出た血は
今日階段ですれ違った
過去の誰かと
同じ顔をした沁みとなり
パンツに色づく
私は
それをひとさしゆびで
そっと掬い
舐めたくなるのだ
2013年5月10日金曜日
見つめる
目も眩むような恋をして
私達は寄り添い
夏を乱し
冬を超えた
辿り着いた宿でも
伏し目がちなあなたは
今、何を想う
あなたの頬を突き刺す
この明かり
揺れる光を手探りに
知りたいと求めたなら
いつもの結末が
そっと迎えにくるだけ
川に笹舟を流すように
すべての罪を洗えたら
遠い海に帰れる
あなたの在り方は
どこまで追いかけても
捉えられぬ
月明かりのよう
2013年5月4日土曜日
鏡
蜜をからめあげ
窓の外では若葉が青々と
鬱蒼と
森のように茂り
形なきものに名を与え
重く垂れさがるのは干し柿
縁側の昼過ぎ
並ぶ車両と駆け抜ける音が
静かな部屋に
斜めにかけたカーテンの隙間より
入ってくる
散らかりすぎた
痛みも
あの暑さよりは、かなしくて
切った糸の先に
温めあったことなど忘れた
そういう私が、見える
2013年4月30日火曜日
黒い鐘
やわらかく、殺されたことがあった。
夏が西日で遮られるとき
貴方の影が霞んだようで
忘れた心が
海の轟のように荒れ狂う
あの夢の端っこを
結んだ人の眼は
狂気と憂いに満ちて
暮れゆくあの日の階段から
転がり落ちたあとの静けさ
何でもなさ
死ねなさを想う
蛙が鳴いた
ひっくり返って泣いた
馬鹿に大きな目玉を見開き
彼としか訪れた事のない喫茶店に
母と妹を呼んだ
代わる代わる満ちてくる夕陽に
私は答える術もなくして
亡骸になった鳩に
萎びた羽に
何と呼び掛ければよかったのか
生きられないという
目をするほど
私は何処に
己の誇りを持って行ったのか
こんな風にしか存在できない中で
泣く事もできない
誰かのルールと
誰かの在り方に
私の何かがこびりつき
捨て去る勇気なく
大きな口を開けた瓶に
すがりついた
凝固物みたいに薫る
夏が西日で遮られるとき
貴方の影が霞んだようで
忘れた心が
海の轟のように荒れ狂う
あの夢の端っこを
結んだ人の眼は
狂気と憂いに満ちて
暮れゆくあの日の階段から
転がり落ちたあとの静けさ
何でもなさ
死ねなさを想う
蛙が鳴いた
ひっくり返って泣いた
馬鹿に大きな目玉を見開き
彼としか訪れた事のない喫茶店に
母と妹を呼んだ
代わる代わる満ちてくる夕陽に
私は答える術もなくして
亡骸になった鳩に
萎びた羽に
何と呼び掛ければよかったのか
生きられないという
目をするほど
私は何処に
己の誇りを持って行ったのか
こんな風にしか存在できない中で
泣く事もできない
誰かのルールと
誰かの在り方に
私の何かがこびりつき
捨て去る勇気なく
大きな口を開けた瓶に
すがりついた
凝固物みたいに薫る
2013年4月15日月曜日
うねりまく
わたしは
もし自由にできるなら
あの人のそばを飛びたい
一時のかなしみに
すべてを壊してしまいたいのに
今日も私は生きていますし
私は今日も過ちを犯す
あの人を
信じられなくなるたびに
この靴ひもは
窮屈になります
ちぎれるような
刃音を聴いた
私は黙って空を見上げた
どの地上にも
この雨は降っていると
知っているのに
待つ
傘もなく
もし自由にできるなら
あの人のそばを飛びたい
一時のかなしみに
すべてを壊してしまいたいのに
今日も私は生きていますし
私は今日も過ちを犯す
あの人を
信じられなくなるたびに
この靴ひもは
窮屈になります
ちぎれるような
刃音を聴いた
私は黙って空を見上げた
どの地上にも
この雨は降っていると
知っているのに
待つ
傘もなく
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